2017年12月26日

No.237 今年を振り返る 2017年1月~6月

 今年を振り返る時期に来ましたので、「我ながらおもしろいこと書いてるなあ(ニヤニヤ)」と自画自賛しながら1年間のコラムを読み返しています。妻が気持ち悪そうに見ています。皆さん、どんな1年だったでしょうか?私はいろんな意味でよい1年でした。私の1年を実りあるものにしてくれた出来事が今年の前半に起きました。

「またかよ!ネタに困ってるのか?」などと思わないでくださいね。まあ、いつもネタには困っていますので、皆さん、ネタのご提供をよろしくお願いします。

 はい!佐々木ベジとソレキアですね。いろんな意味で、助かりました。どのM&Aアドバイザーも、どのM&A弁護士も、どのIRアドバイザーも当時注目しておらず、かつ、いまだに知らない人たちも多い佐々木ベジとソレキアですが、あのケースはこれまでの日本企業の安定株主神話をひっくり返したケースです。しつこくてすみませんが、もう一度ソレキアの株主構成と安定株主比率を見ておきましょう。目に焼き付けておく価値があります。

安定株主を単純に合算すると安定株主比率は34.65%なのですが、自己株式を控除して計算すると40%近いのです。こんなに安定株主比率が高いのに買収されてしまいました。何が原因だったかをあえて繰り返し申し上げますが、守り方を間違ったからです。佐々木ベジが会長をつとめるフリージア・マクロスに株式を取得されたのはもう随分前のことですし、その時点で買収防衛策を入れておけばこんなことにはならなかったでしょう。現にフリージア・マクロスはソレキア以外の会社の株式も取得していましたが、そちらには敵対的買収を仕掛けていません。その会社が買収防衛策を導入したから、だと思われます。また、ソレキアは、敵対的買収を仕掛けられた後でも、守ることができたのに、間違った方法を選択してしまいました。富士通に対してホワイトナイトへの就任を要請したことです。

ホワイトナイトが出てきたことでこんなことになっちゃいました。こんなにもTOB価格の引上げ合戦になったことってありましたっけ?スティール・パートナーズがソトーに仕掛けた敵対的TOBのときも、大和証券系のファンドがMBOで助けようとしてTOB合戦になりましたが、これほどの応酬にはなっていません。ソレキアは、TOB価格が2,800円のときに増配を公表しておけばよかったんです。50円の配当を500円にしておけば、株価はTOB価格を間違いなく超えたはずです(もう少し工夫は必要ですが)。有事に配当を10倍にする戦略など当たり前です。佐々木ベジがストラテジックバイヤーであれば、増配の基準日以降にまたTOBを仕掛けてくる可能性はありましたが、そもそも彼の主張している内容を分析すれば、ファンドと同じだということがわかるはずです。このケースにホワイトナイトは必要ありませんでした。また、富士通のTOBが失敗した時点からでも防衛スタイルを変えれば勝てたのです。もったいない。ま、ソレキアに同情するつもりは全くありませんが・・・。

ソレキアはなぜこんなことになってしまったのでしょうか?それは、ソレキアのCFOとアドバイザーの責任です。買収防衛策や過去の敵対的TOBのケースを勉強していなかったCFOに多大な責任があります。「大和さん、だいぶ昔の話だけど、ホワイトナイトが出てきても防衛に失敗したケースあったよね?」と質問できていたら流れは変わっていました。また、適切なアドバイスをしなかった主幹事には更に多大な責任があります。大和さんは過去失敗したソトーのケースを忘れてしまったのでしょうか?もう敵対的TOBに対してまともなアドバイスをすることができる人材がいないのでしょうか?

でもこれは、ソレキアに限ったことではありません。失礼ながら、皆様の会社でも起こり得ることではないでしょうか?ソトーのケース、と言われて思い出せる方は少ないと思います。それはしょうがありません。CFOはこういうことばっかりやっている訳ではありませんから。しかし、少なくとも、定期的にこういう情報がCFOのもとに集まる体制を構築しておく必要はあるでしょう。皆さんの主幹事証券は佐々木ベジとソレキアのケースを紹介しましたか?とあるIRアドバイザーが作った敵対的TOBに関する資料を見ました。中国企業が買いに来るかもしれませんよ!一緒に防衛体制を構築しましょう!と書いてありましたが、佐々木ベジとソレキアのケースに触れていませんでした。おそらく知らないのでしょう。いまだに「チャイナマネーが!」などと言っているのも時代錯誤のような気がしますし、防衛体制の構築と言いつつソレキアのケースを知らないなどプロとしては恥ずかしい限りです。

来年もソレキアのケースには触れ続けます。重要なケースですし、皆さんには覚えておいていただきたいからです。なぜなら、企業防衛においてやってはいけないことが満載のケースだからです。なお、あらためて四季報でソレキアを調べてみると「電子部品商社。システムとソフトの開発、販売に強み。フリージア・マクロスの持分法適用会社」とあります。電子部品商社???旧村上ファンドが狙っている業界に属する企業だったのでしょうか・・・。来年は、佐々木ベジと旧村上ファンドのタッグマッチが見られるかもしれません。まあ、また2月頃になったら佐々木ベジが単独でどこかの会社に敵対的TOBを仕掛けるかもしれませんね。

明日のテーマは「今年を振り返る 2017年7月~12月」です。お話の中心は旧村上ファンドです。

 

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