2020年07月28日

No.874 (無料公開)間違いなく敵対的TOBが増える中どうやって守っていくか?

最近日本で起きた敵対的TOBは以下のとおりです。

この中で成功したケースは、佐々木ベジさんvsソレキア、伊藤忠商事vsデサント、前田建設工業vs前田道路です。そして、このまま何もせず意見表明だけで戦うのだとしたら、コロワイドvs大戸屋HDも敵対的TOBの成功ケースになるでしょう。

さて、これらのケースはなぜ成功したのでしょうか?そのほとんどが、対象会社が適切な守り方をしなかったから成功したのです。

まずソレキアですが、佐々木ベジさんが敵対的TOBを仕掛ける前に、佐々木ベジさんが会長をつとめるフリージア・マクロスがソレキア株を6.75%取得していました。ソレキアは上位株主にフリージア・マクロスが登場したことを把握していました。にもかかわらず何もしませんでした。フリージア・マクロスが上位株主に登場した時点で「なんだこの株主は?」と危険を察知し、買収防衛策を導入しておけば佐々木ベジさんに敵対的TOBを仕掛けられ、買収されることはありませんでした。佐々木ベジさんは公開買付届出書の冒頭で以下のとおり書いています。

フリージア・マクロス又は公開買付者から対象者に対してコンタクトを行うことも検討いたしましたが、上述のとおり、対象者からフリージア・マクロスへのコンタクトがなされない中、本公開買付けの開始に先立って対象者と事前に協議を行う場合、対象者側の全部或いは一部の役員が本公開買付け前に動くことにより、何らかの買収防衛策が導入される可能性や、かかる行為により情報漏洩等が万が一生じた場合、会社の業績や実態と関係なく株価が一時的に大きく変動し、対象者の株主や対象者の潜在投資家の投資判断に影響を与えてしまう可能性に鑑み、本書提出日まで、公開買付者及びフリージア・マクロスは、対象者役員と面談の機会を持っておりません。

佐々木ベジさんはソレキアが買収防衛策を導入することをおそれていたのです。ソレキアは買収防衛策をフリージア・マクロスが株主になった時点で導入しておけば助かっていました。後に佐々木ベジさんがターゲットにした日邦産業は、フリージア・マクロスが株式を取得した後、一度廃止していた買収防衛策を復活させました。フリージア・マクロスの株式取得は20%ギリギリで止まりました。

伊藤忠商事に敵対的TOBを仕掛けられたデサントはどうでしょうか?この勝負ははっきり言ってデサントにとって相当不利でした。しかし、デサントが事前にこういうことをやっておけばよかったのです。

No.546 伊藤忠vsデサントを振り返る~ここでこうしておけばデサントは助かったはず~

No.537 新しい買収防衛策をデサントが導入していたら?村上ファンド投資先が導入していたら?

こういうことをやっておけば、以下のようなさみしい事態にはならなかったのです。

No.552 買収防衛策を導入しないのは無責任だ!!!(無料公開)

デサントは適切な対応をしていれば、長年にわたってデサントに尽くしてくれた役員がこのようなさみしい最期を迎えることはなかったのです。

そして、前田道路。前田建設工業が24%も株式を保有している状況において、普通の対抗策では勝てる訳がありません。ホワイトナイトも出てこないでしょうし、MBOなどで対抗できる訳がありません。TOB価格で必ず負けます。前田道路はパックマン戦略を実行するしかなかったのです。こういうことを言うと「パックマンなんて現実的な対抗策ではない」「だれもやったことのない防衛戦略だ」とおっしゃる方がいますが、パックマンをやらないと前田道路は負けるのです。現に、わけのわからん対抗策になるはずもない特別配当をやって、見事負けました。この策にならない策を講じたアドバイザーの神経を疑います。私はなにも本当にパックマンをやれ!投資家利益なんて無視だ!と言っている訳ではありません。以下のようにやればよかったんです。

No.751 前田道路はパックマンで勝てる!~前田建設工業の買収防衛策の攻略方法~

No.775 前田道路はパックマンを「主軸」にして対応すればよかったと思います

No.811 前田道路が守りたかったものは何なのか?それを明確にしていなかったから敗れたのでは?

そして大戸屋HD。創業家とのいざこざが発生した段階で、私がアドバイザーだったら「すぐに買収防衛策を導入してください」とアドバイスしました。だって創業家が保有している株が同業やファンドに譲渡される可能性が非常に高くなっているのですから。どうして大戸屋HDのアドバイザーは当時、買収防衛策を導入しろとアドバイスしなかったのでしょうか?不思議でなりません。いくつかハードルはあるものの、以下の方法でやれます。

No.852 大戸屋はこうしておけばコロワイドに株主提案をされることもなかったのです

最近敵対的TOBを仕掛けられ支配されてしまった会社は、どの会社も助かることができました。まあ、デサントは厳しいですが、役員がさみしく会社を去るような事態は避けることができたと思います。

ではなぜこれらの会社は敵対的TOBを仕掛けられ、支配されてしまったのでしょうか?簡単です。普段からちゃんと企業防衛とは何か?を考えていなかったからです。普段から適切なアドバイザーに企業防衛のことを相談し、普段から企業防衛のことを適切なアドバイザーと議論し、適切なアドバイザーとともに手を打っておけばこんなことにはなりませんでした。適切なアドバイザーに普段から相談していなかったこれらの会社が悪いのです。

上場会社のCEOやCFOは普段からアンテナを高く張っておく必要があります。旧村上ファンドの動向、旧村上ファンド以外のアクティビスト・ファンドの動向、敵対的TOBの動向、買収防衛策の動向・・・。いろんなことにです。詳細についてはCFOにまかせればよいですが、CEOも関心を持っておく必要があります。最終的に腹をくくらなくてはならないのはCEOだからです。

興味を持ち、アンテナを高く張り、情報を集める。そして適切なアドバイザーに相談し、普段から企業防衛体制を構築しておく必要があるのです。

「適切なアトバイザーとは?」

それは当社に決まっています!

 

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