2023年01月05日

No.1458 物言う株主への立退料

以下、日経電子版の記事です。この記事、興味があったので読みたかったのですが、なぜか昨日まで読めなかったんです。日経ヴェリタスだからかな?

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC2061J0Q2A221C2000000/

いくつか私のコメントをツイッターで発信していますが、いろいろと突っ込みたいところがあるので、コラムにします。

https://twitter.com/IB57185560/status/1610837152270798852

https://twitter.com/IB57185560/status/1610838277220864000

https://twitter.com/IB57185560/status/1610840254231236608

まずこの記事に出てくる会社ですが、大豊建設、セントラル硝子、ジャフコです。

アクティビスト(物言う株主)に攻められた企業が、自社株買いで彼らの保有株を買い取る動きが2022年は相次いだ。企業がそのために投じた金額は、驚くほど大きい。事実上の「立ち退き料」だ。たいていの場合、アクティビストは利益を確保して去るが、その他の株主にとって損得勘定はどうなのか。

ほかに大規模自己株TOBを実施した会社は、三信電気、フージャースHD、新明和工業、西松建設ですが、すべて旧村上ファンドに攻められた会社ですね。ほかに大規模自己株TOBを実施したケースってありましたっけ?さらに言えば、旧村上ファンド以外に大規模自己株TOBをやってもらってExitした有名なケースってありましたっけ?この記事「アクティビスト(物言う株主)に攻められた企業が・・・」って書いてますけど「旧村上ファンドに攻められた企業が・・・」って書いたほうが正確では?

日本で最も有名なアクティビストであろう村上世彰氏は、ここ数年、こう言い続けている。「もう歳も歳だし、もうけを出して財産を増やすのが目的ではない。お金はもう(十分にあるから)いらない。資本効率の悪い日本企業に再編を促し、日本企業を変えたい」。ところがその言葉とは裏腹に、22年はもうかってしょうがない一年だったに違いない。

ほんまかいな?別に私はお金儲けが悪いことだなんて思ったことは一度もないです。村上さんってお金儲けが大好きですよね?だったらこんなこと言わずに「儲かって儲かって笑いが止まらん!」と正直におっしゃった方がよいと思いますよ。ヘンに「資本効率の悪い企業に再編を促し、日本企業を変えたい」といったようなことを言うから、上場会社が信用しないのでは?お金儲けは決して悪いことではないのですから、正々堂々と「金儲けして何が悪い!」と開き直った方がすがすがしいです。

共通するのはこれらの自社株買いが株主還元のためではなく、村上氏を追い出すための方策ということだ。設定された金額は、いずれも村上氏の保有分をやや上回る規模。「立ち退き料」以外のなにものでもない。自社株買いは通常、配当と並ぶ株主還元の一環として株式市場から評価されることが多いが、立ち退き料となると話は別だ。ほかの株主にとってうまみはない。

ま、誰が見ても株主還元や指標改善のためではなく、旧村上ファンドを追い出すために自己株TOBをやっているのはあきらかです。ただ、本当にほかの株主にとってうまみがないんでしょうか?ROEなどの指標改善効果はあるのですから、ほかの株主にとってうまみがないってことはないですし、村上さんだけが儲かるわけでもないです。村上さんの肩を持つつもりはないのですが、村上さんは「この会社に投資して還元を改善させれば儲かる」と考えてリスクをとって投資したのです。村上さんが最初に目を付けたのです。ほかの株主にとってもうまみがないわけではなく、ROEなどが改善されます。村上さんが最初に目を付けてリスクをとって投資したのだから、ある意味、一番儲かってもよいのでは?と思います。だから村上さんは正々堂々と「ワシはリスクを取っとんねん!金儲けの何が悪いんじゃい!」と開き直るべきです!

ただ、会社の中長期的な成長資金まで自己株TOBにつぎ込んだとしたら問題ですが、それは村上さんのせいではなく、毅然と「そこまでの額を自己株TOBに費やせない」と突っぱねなかった経営陣の責任です。

だがその思惑を見透かした株式市場は、ジャフコ株を押し上げなかった。最終的に株価は設定されたTOB価格決定期間中にTOB開始の最低条件としていた株価にさえ届かず、ジャフコは自社株買いをひとまず断念せざるを得なかった。

これ、株式市場がジャフコの思惑を見透かしたから株価が上がらなかったんですかね?私は以下の理解です。価格決定期間中のVWAPから1%ディスカウントした価格がTOB価格なのだから、価格決定期間中にジャフコ株を買ってもディスカウントした価格でしか買ってもらえないから、と市場が見たからでは?

https://ib-consulting.jp/column/4611/

そして結局、ジャフコはプレミアム付きの自己株TOBを実施すると公表しました。まあ節操がないと言われても仕方がありません。

https://ib-consulting.jp/newspaper/4631/

アクティビストを追い出すのではなく、腰を据えて付き合うことを選んだ好例が川崎汽船だ。シンガポールのアクティビスト、エフィッシモ・キャピタル・マネージメントが大量保有報告書で川崎汽船株を6%強保有したと開示したのは2015年。それから川崎汽船株をどんどん買い増し、一時39%まで保有比率は高まった。

その後、川崎汽船はエフィッシモから社外取締役を迎え入れるなどして対話を重ねた。そうこうしているうちに海運市況は大幅に改善し業績も株価も急回復、22年11月に1000億円の自社株買いを実施することを決議し、さっそく東京証券取引所の立会外取引を利用して同月に382億円を買い取った。そのうちエフィッシモの売却分が約318億円とみられる。

これ、間違っていると思いますよ。もちろん真実は川崎汽船にしかわかりませんが、エフィッシモが川崎汽船の大量保有報告書を提出したのは2015年9月4日で保有割合は6.18%でした。その後買い増しを続け、保有割合が38%を超えたのが2016年11月7日です。2017/3期の配当可能利益ですが、単体の財務諸表を見ると純資産68,621百万円しかありません。資本金75,457百万円、資本準備金60,302百万円です。配当可能利益がありません。ですから2017年3月期~2021年3月期にかけて川崎汽船は配当を出していません。無配です。川崎汽船はエフィッシモと向き合ったのではなく、追い出したくても配当可能利益がないから自己株TOBで買い取ることができなかった、と見るのが自然でしょう。

ここ向き合った企業をなんとか記事に掲載したいために川崎汽船を持ってきたのでしょうが、かなりムリがあります。「川崎汽船は自己株TOBをやらずに向き合ったようにもみえるが、実際は違う。配当可能利益がないため自己株TOBで追い出したくても追い出せなかったのだ。現に川崎汽船は業績が回復するやいなや自社株買いを実施し、エフィッシモ保有分を一部買い取っている」と書いたほうがよかったのでは?

注意しなければいけないのは、アクティビスト対応は一歩間違えると他の株主の離反も招きかねないということだ。立ち退き料を払ってアクティビストを追い出した後に残るのは、既存株主の経営陣に対する不信感、では根本的な問題解決になっていない。

本当に怖いのは他の株主が離反することではありません。従業員が離反することです。内部留保を蓄積してきた会社は誰の努力でそうなったのでしょうか?なんとか会社を永続するために、役員の皆さんもがんばってきたことでしょう。取引先にもムリなお願いをして仕入れ価格を安くしてもらったのかもしれません。そして従業員に過度な負担を強いてきたのでは?研究開発投資や設備投資を削り、文房具1つ買うのも口うるさく言われ、経費も大幅削減。給料なんてあがりゃしない・・・。会社の永続のために従業員に負担を強いた結果の内部留保でしょう?株主総会の決議を取れば内部留保を株主還元に回せるという意味では株主のものなのですが、その内部留保は誰のガマンの結果なのでしょう?

私は株主への還元など軽視してよいと言っているわけではありません。株主だって会社の永続のためにガマンを強いられてきたのです。配当は低い、株価も上がらん。ただし、だからと言って株主だけが得をするような利益配分をするべきではないと考えています。

ましてや村上さんに株を買われてクビにされるかもしれないから、追い出すために立ち退き料を払うなどもってのほか。そのような行為を誰が見ているのでしょうか?

他の株主が離反することが恐れるべきことではなく、従業員に「うちの経営者は保身しか考えていないんだな」と見透かされることが恐れるべきことですよ。村上さんに買われるということは株価が相当割安だということですし、ある程度株主還元を強化することは避けて通れません。でもそれが株主だけ、村上さんだけを利するような行為である場合、従業員がそっぽを向き、会社をやめていきます。優秀な従業員から会社を去っていくことでしょう。会社の中長期的な競争力の低下の始まりです。

アクティビストに狙われないような会社にするためにはどうすればよいのか、企業防衛とは何なのかをよく考える必要があります。それは狙われてから考えても遅いのです。今から企業防衛投資をしておかないとダメなのです。

 

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