2022年05月11日

No.1304 (無料公開)企業防衛にかけるお金はコストではなく投資です

 

企業防衛投資!これで流行語大賞を取りたい!

さて買収防衛策の導入支援や企業防衛体制の構築するに当たって、皆さんは「そんなにお金がかかるのかあ」とお考えになったことはありませんか?

私は「まずそこが違う」と思うのです。当社は社会情勢についてのコラムなどはまとめませんが、昨今ウクライナが大変なことになっています。私は専門家ではないので詳しいことを論じることはできませんが、それでも「有事に備えた対策を平時からちゃんと打っておくことは大切だ」くらいは言えます。

皆さん「有事になると大変ですよ。平時から備えを怠ってはいけません」と言われても、「まあ、うちの会社に敵対的TOBが仕掛けられることはそうはないんじゃないの」とどこか他人事に考えていませんか?お気持ちはわかりますよ。いくら世の中で敵対的TOBが増えても、自社がターゲットになるかもしれないと本気で考える人は少ないでしょう。

ただ1つ言えることは、これまで敵対的TOBを仕掛けられたすべての会社がそう思っていたということです。皆さんと同じように「いくら敵対的TOBが増えているからと言って、うちがターゲットになることはないだろう」と考え、そしてその期待は裏切られました。敵対的TOBを仕掛けられ、買収者の傘下になってしまったのです。

その会社の独立性はもうありませんし、当時の役員の皆さんはどうなったのでしょうかね。クビになった会社もあります。以下のとおりです。

No.552 買収防衛策を導入しないのは無責任だ!!!(無料公開)

なぜデサントは伊藤忠商事に敵対的TOBを仕掛けられ、成功してしまったのでしょうか?デサントが防衛投資をしてこなかったからでしょ?伊藤忠商事が30%近く株を持っていたこともあり、企業防衛なんて必要ないから考えたこともなかったんでしょ?伊藤忠商事にまさか敵対的TOBを仕掛けられるかもしれないなんて考えもしなかったんでしょ?伊藤忠商事との関係が険悪になり、ホワイトナイトを探さなくてはならない状況=ほぼ有事になってしまったものの、これまで防衛投資をしてこなかったから具体的で効果的な対策を打つことができなかったのです。同じような状況だったのは前田道路もですね。大戸屋も似たような状況だったと言えます。みんな防衛投資をしてこなかったから買収されたんですよ。

皆さんがある会社にM&Aをするとき、必要なお金のことをコストと考えますか?たぶん考えませんよね。皆さんが工場を建てるときや出店のための土地を購入するとき、必要なお金のことをコストと考えますか?考えませんよね。ではどう考えるかというと「投資」と考えるはずです。企業防衛も同じです。そもそも企業防衛ってのはM&Aの世界の話です。攻める方=投資と考えられがちですが、守る方も投資なんですよ。

こう書くと「投資にはリターンが必要では?防衛投資のリターンとは?」 まさに会社を守る、会社の独立性を守る、会社の文化を守り貴社の企業価値を生み出してくれる従業員の流出を防ぎ永続的に企業価値を向上し続ける。それが防衛投資のリターンです。会社を有事にしないことによる、ムダな防衛支出を防ぐリターンもありますね。また、防衛投資をすることによって、企業防衛に対する対応策を社内に根付かせることもできます。企業防衛体制を構築することによって、社内の有能な人材に防衛に関する知識、ノウハウを植え付け、それを組織として継承していけば、立派な資産になります。

だからこそ企業防衛にかかるコストではなく、防衛投資と考えてみてはどうですか?と私は思うのです。そう考えると社内の雰囲気も変わりませんか?コストだと「うちが敵対的TOBを仕掛けられるかどうかもわからんのに、そんなコストはかけたくない!」と考えがちですが、これを「うちが敵対的TOBを仕掛けられるかどうかはわからない。でも仕掛けられると会社がひっくり返る。そうならないように、社内体制の整備やマニュアル整備、必要に応じて買収防衛策の導入、社外のアドバイザーの確保といった防衛投資、安全対策投資、危機管理投資をしておくべきではないか」と考えてみてはどうでしょうか?生産設備や店舗、研究開発施設などの安全対策、危機管理対策に投資をしない会社ってないでしょ?

昨今、どこの上場会社もコスト削減しなくてはならない時代です。そんなときに「防衛体制構築のためにアドバイスをしてもらおう!」と社内で言っても「そんなコストはかけられん!」と言われるのがオチでしょうね。でもコストという発想から抜け出すべきではないかと思うのです。ちゃんと「コストじゃない。投資なんだ!」とわかってもらうことが大切です。

これからの時代、会社の安全をタダで維持することは困難だし、誰もが敵対的TOBのターゲットになるのです。ちゃんと防衛投資をする意味があるのです。なお社外のアドバイザー確保、つまり用心棒代もコストではなく投資ですよ。頼りになる用心棒もいざというときには味方になってくれるかどうかわからないのです。「すんません。うち相手側なんですわ」と言われたらシャレになりませんから。

あ、脅しているわけじゃないですからね(笑) くれぐれも誤解なきよう。まあ、そもそも国が国民の生命と財産を守るために防衛予算をとっているのに、会社が社員を守るための防衛予算をとらないのもおかしな話なのですよ。あえて「社員を守る」と書きました。株主は入れていません。

ちなみに本格的な敵対的TOB時代はこれから始まります。最近起きた敵対的TOBなんて、あまっちょろいですよ。だってそもそも対象企業の規模が小さかったり、部分的買収だったりします。そして相手もアクティビストです。また今度書きますが、日本は人口が減っていきますから、国内市場はどこもパイの奪い合いになるでしょう。そうなる前に敵対的TOBを仕掛けてくる会社が増える可能性があります。そのターゲットにならないよう、貴社が先に検討を始めたほうがよい時代です。

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

コラムを読んでくださっている皆様の会社には、買収防衛策を導入している会社もあれば導入していない会社、廃止した会社もあります。買収防衛策を導入していない会社、廃止した会社は、買収防衛策を導入・再導入するかは別の議論として、懐に買収防衛策を忍ば ...

続きを読む

最近、ムチャな企業防衛行動をとる会社が少なくなってきたように思います。逆にムチャな攻撃方法をとる会社も少なくなったように思います。

続きを読む

カテゴリからコラムを探す

月別アーカイブ