2022年11月14日

No.1426 これはちょっとどうなのかなあ・・・

以下、ダイヤモンドオンラインの記事です。

【スクープ】IRジャパン衝撃の「買収提案書」入手、東京機械の買収防衛でマッチポンプ疑惑

https://diamond.jp/articles/-/312651?utm_source=daily_pm&utm_medium=email&utm_campaign=20221110

有料記事なので簡単にまとめると、

・東京機械製作所は2021年7月、アジア開発キャピタルに短期間で大量の株式を取得されたが、有事型買収防衛策で対抗(アジア開発キャピタルを除いた株主で発動を決議。MoM要件で決議を取った事例)。IRジャパンは東京機械製作所のアドバイザーだった。

・しかしアジア開発キャピタルの大量買付けが行われる前の2021年3月25日、IRジャパンの栗尾氏(当時副社長)はアジア開発キャピタルに東京機械製作所の買収を提案。

・このような提案がアジア開発キャピタルにどういう影響をおよぼしたかは不明。

・アジア開発キャピタルと東京機械製作所の紛争が表面化した後、IRジャパンは東京機械製作所のアドバイザーにつき、1億3,000万円の報酬を得ている。

・これでは、消防士が付け火犯をけしかけるような、まさに「マッチポンプ」と言われても仕方がないのではないか。

というものです。

なお、取材に対してIRジャパンは以下のように回答したそうです。

「当社としましては、栗尾氏がアジア開発キャピタルに東京機械の買収提案をしたことについて一切関知しておりません。そもそも、栗尾氏は、アジア開発キャピタルと東京機械製作所との案件の担当者(プロジェクトメンバー)ではなく、同案件に全く関与しておりません。また、同案件の当社担当者をはじめとする当社の全ての役職員において、同案件(当社による東京機械製作所へのアドバイザリー業務)が開始される前から栗尾氏が同社にアクセスした事実並びに買収提案を行った事実を知る者はいませんでした」

これが事実だとしたら「あり得ない」の一言です。まず会社は「栗尾氏個人がしたことであり、会社は関知していない。」と言っていますが、これがそもそもあり得ないのですよ。通常、こういった買収提案を打診する場合、当然、会社内部でコンフリクトチェックをします。アジア開発キャピタルにこういう提案をしてよいのか、東京機械製作所とIRジャパンが何かしらの契約を結んでいないかを社内のしかるべき部署に確認を取ります。一役員や一社員が勝手に買収の提案などできないような仕組みが普通は構築されています。

また、アジア開発キャピタルに買収提案を打診したがうまくいかなかった場合でも、提案した事実を残します。東京機械製作所から何かしらの依頼があった場合に備えるためですね。一方に買収提案をしておきながら、他方から防衛アドバイスの依頼を受けた場合、「本当に受けていいのか?マッチポンプと言われないか?」というリスクがありますからね。細心の注意を払います。

ですから、この栗尾氏が勝手に買収提案を打診したというのも問題であり、かつ、それを会社として知らなかったというのも大問題なのです。コンフリクトチェック機能が一切働いていないということですから。

これ、東京機械製作所は大激怒でしょ?いや、大激怒どころの話ではないですよ。IRジャパンの栗尾氏が買収提案の打診をしたからアジア開発キャピタルに目を付けられた、IRジャパンの栗尾氏がヘンなことをしなければターゲットにならなかった、IRジャパンのマッチポンプじゃないか!と思うのでは?そりゃ当然思うでしょ?アジア開発キャピタルに買われ、結果、その株式を読売グループに引き取ってもらった結果、東京機械製作所の独立性はなくなってしまいました。IRジャパンのせいじゃないか!と会社は思うでしょう。

そういうことになるリスクがあるから、このビジネスは慎重に対応しなくてはならないのです。儲かるから何でもあり!昨日の敵は今日の友!という仕事ではないのです。高いフィーを請求するから、高い倫理観が必要なのです。

ここで皆さんに考えていただきたいことは「有事になったら、いや、有事にならないようにするためには、どういうアドバイザーを頼ればいいのか?」ということです。アドバイザーのコンフリクト体制はきちんと整備されているのか、当社に企業防衛のアドバイス提案をしておきながら逆サイドに買収提案をするような会社ではないのか。それをきちんと確認しないとダメです。当然確認しても「もちろんです。そのようなことはしません」と回答するでしょうが、本当にそうなのかを見極める目を養わなくてはなりません。ようは経営者・CFOはアドバイザーの実力や倫理観を見抜く力を付けないとダメということです。

私は何も「攻撃する側につく可能性のあるアドバイザーを信用するな」と言っているわけではありません。アドバイザーは攻める側にも守る側にもつきます。私だってこれから先、もしかしたら攻める側につくことだってあるかもしれません。アクティビストのお手伝いをする可能性だってあります。

ただ、重要なことは「高い倫理観と信念を持つこと」だと私は思うのです。せっそうのないお金儲けだけが目的の買収提案をしたり、あおるだけの企業防衛提案をしたりするのはよくありません。せっそうもなけりゃあ、品もない。

そういう意味では、私は「平時型買収防衛策など時代遅れだ!有事型買収防衛策でいいんだ!」と主張するアドバイザーを信用していません。有事型買収防衛策というのは有事になることを許容するということであり、本来アドバイザーは会社が有事にならないようにアドバイスすべきと考えるからです。

この時代、いろんな人がいろんな提案をしてきます。繰り返しますが、大切なことはそういう人たちを見極める目を養うことです。平たく言えば「経営者は人を見る目がなきゃダメよ」ということですよ。

あの~、ちょっと気になっているんですが、ダイヤモンドオンラインのIRジャパン関連のスクープはこれで終わりなんでしょうか?東京機械製作所だけで終わるんですかね?他にも似たようなケースが出てこないとも限りません。

 

このコラムのカテゴリ

関連する
他のコラムも読む

2022年11月01日 有料記事

No.1418 ジャフコの狙い

旧村上ファンドが10月28日に変更報告書を提出し、保有割合が18.35%になりました。議決権ベースだと18.87%ですので、ジャフコが取締役会決議で導入した有事型買収防衛策のトリガーである20%まであと1%程度です。おそらくあと1回変更報告 ...

続きを読む

東京機械製作所という会社がアジアインベストメントファンドという投資家のターゲットになり約34%の株式を取得されました。そして東京機械製作所は有事導入型買収防衛策で対抗しようとしています。

続きを読む

カテゴリからコラムを探す

月別アーカイブ