2022年09月30日

No.1400 誰にとっての敵か?もうその話はええやろ・・・

以下、日経電子版の記事です。ちょっと前の記事ですみません。最近セントラル硝子のことばっかり書いていたので、出すのが遅くなりました。

迷走シダックス、敵対的TOBの「敵」って誰だ

https://www.nikkei.com/article/DGXZQOUC103940Q2A910C2000000/?n_cid=NMAIL006_20220917_A

そもそも敵対的TOBの「敵」とはどのように決まるのか、改めておさらいしよう。今回のケースでも分かるように、TOBをかけてきた買収者(オイシックスは約27%の株を取得するだけなので正確には買収者ではないが)が敵か味方かを判断するのは、TOBに対して賛否を表明する権利を持つ対象会社の取締役会だ。

あらためて私が説明しますと、まず敵対的TOBの流れですが、買収者が対象会社に対してTOBの実施を公表します。対象会社はTOBが公表された当日に「当座のコメント」を公表します。内容は「このTOBは当社取締役会の賛同を得たものではありません。TOBに対する取締役会の意見はTOBの詳細を確認した上で後日公表します。ですので株主の皆様、TOBへの応募はとりあえず控えてください」というものです。

当座のコメントは法律に基づいてなされるものではなく、株主に対して「これは取締役会の賛同を得たものではないですよ。意見は後日公表しますから応募しないでね」と呼び掛けているものです。

私はこの時点で「敵対的TOB」と位置付けていますが、マスコミはそうではないです。なぜなら取締役会が反対と表明していないからです。この時点だとマスコミは「敵対的TOBに発展する可能性がある」と報道しますね。私は、取締役会の賛同がない時点で敵対的TOBと位置付けています。「賛同を得てないのだから敵対的としても問題ないでしょ?」というスタンスです。まあ、正直言ってどっちでもいいです。

そしてTOB開始から10営業日以内に賛否の意見表明が出るのですが、まあ「留保」として質問権を行使するのが一般的です。そして5営業日以内に対質問回答報告書が提出され、その内容を踏まえて対象会社が賛否を表明します。こういう流れです。誰にとって敵なんだ?という議論をよく耳にしますが、便宜上、取締役会が反対しているものやまだ賛同を得ていないものを敵対的TOBとしているだけであり、別にどうでもいいです。「株主にとっては敵対的じゃないぞ!」これもどうでもいいです。聞き飽きた話です。

「会社は誰のものか」という議論はよくなされ、最近では従業員や地域社会など様々なステークホルダー(利害関係者)のものという論調も勢いを増しているが、資本市場まわりでは一応「会社は株主のもの」というのが定説とされてきた。

この定説が間違っていたということですね。会社はまず「もの」ではありません。会社を所有するって違和感があります。株主が所有しているのは株式であって、会社ではありません。取締役の選解任権があるからあたかも会社が株主のものであるかのように誤解されていますが、別に株主は会社を所有していません。「会社の解散権も持っているぞ」とおっしゃるかもしれませんが、それこそが会社がものではないということですね。「もの」に解散という概念はないですから。

もし会社が株主のものであるならば、その会社に第三者がTOBを仕掛けてきた場合、その第三者が味方か敵かを決めるのは本来、株主であるべきだろう。しかし実際に賛否表明を出すのは取締役会だ。ここにある種の矛盾が生じている。

うん、会社がものではないから取締役会が賛否を出すんですよ。前提が間違っています。

敵対的案件はイメージもあまり良くないし成功しにくい、と思ったらおそらく間違いだ。じつは株主さえ味方につければ、敵対的TOBは意外と成立に持ち込めることがわかってきている。

ここ数年の間でもコロワイドによる大戸屋ホールディングスへのTOB、伊藤忠商事によるデサント、日本製鉄による東京製綱、前田建設工業による前田道路と敵対的TOBが成立した事例が相次いだ。いい条件を出して株主を振り向かせることさえできれば、取締役会が反対する敵対的TOBであっても成功するのだ。

前半はあっています。最近では敵対的TOBのイメージはさほど悪いものではありませんし、株主を味方につける=TOBに応募してもらう、ことができればTOBで勝てます(当然、単純な話ではなく、株主を味方につけても負けるときはあります)。

しかしここ数年の敵対的TOBって本当に敵対的TOBですかね?ここに挙げている敵対的TOBの事例って、本当に胸を張って「敵対的TOBを成功させたぜ!」って言えるような案件ですか?

コロワイドvs大戸屋:19.16%⇒46.77%

伊藤忠商事vsデサント:30.44%⇒40.00%

日本製鉄vs東京製綱:9.91%⇒19.91%

前田建設工業vs前田道路:24.68%⇒51.29%

所有割合を増やしだけ、のように見えますが・・・。敵対的TOBじゃなくて、敵対的買い増しですね。そして敵対的買収者に比べて対象会社の規模がずいぶんと小さいです。言い方悪いんですけど、敵対的TOBじゃなくて「弱い者いじめ」にしか見えないんですけど・・・。本当の敵対的TOBって以下のような感じでは???

https://ib-consulting.jp/column/613/

とはいえ、日本の企業人の間では「敵対的」と呼ばれることへのアレルギーはまだ根強い。昨年、エイチ・ツー・オーリテイリング(H2O)との間で関西スーパーマーケット(現・関西フードマーケット)争奪戦を繰り広げた首都圏地盤のスーパー、オーケー(横浜市)。オーケーの二宮涼太郎社長は上場来高値と同額のTOB価格を提案しながらも、最後まで友好的でないとTOBはかけないという考えを曲げず、最終的に関西スーパーを取り逃がした。

客商売をする以上、敵対的買収と騒がれることのレピュテーションリスクを恐れたわけだ。だがオーケーがもし敵対的TOBに踏み切っていたら「あの値段には対抗できなかった」(H2O関係者)ため、成立した可能性が高いだろう。TOBをかける側が「敵対的」とマスコミに喧伝されることを恐れず腹をくくりさえすれば、意外と成功する確率が高い。

これ、オーケーの狙いは別にあったと思いますよ。以下です。あと、そもそも関西スーパーに敵対的TOBを仕掛けても絶対に成功しませんから。プロが見れば一目瞭然です。

https://ib-consulting.jp/column/3930/

こんな例はどうだろうか。企業価値を向上させる努力を長年怠り株価を割安に放置しているA社。そこに目を付けたB社が「うちが買収してテコ入れすればもっと企業価値を上げることができる」とTOBをかけた。A社の取締役会は「B社に買収されたら経営陣が刷新され我々もクビになる」と思って「反対」表明する。かくして敵対的TOBとなった。

B社は「敵」呼ばわりされることになるが、投資家からすれば、どう考えても悪いのは企業価値向上に取り組んでこなかったばかりか、保身に走ろうとしているA社の取締役会だろう。誰から見るかで敵は変わる。ただ「会社は取締役会のもの」という主張は聞かない。それなら取締役会から敵と呼ばれようが、あまり気にしなくてもいいのかもしれない。

こんな例はない。こんな単純な話じゃないんですよ。そもそも上場会社の経営者は株価を割安に「放置」しているわけではありません。当然、いろんな経営施策を実施して株価を上げよう、上げたいと思っています。そりゃ当たり前ですよ。上場しているんですから、株価なんてどうでもいいと考える経営者は今の時代いません。

経営者は「これで株価が上がるんじゃないかという経営施策を公表しても、全然株価が反応してくれない。一方で、どうでもいい報道で株価が反応する。株式市場はわけがわからん」とおっしゃいます。一生懸命やってるんですよ。でもなかなか株価が上がってくれないんです。反対=経営者の保身、ではありません。

日本で敵対的TOBが実施しやすく、そして経営者が反対せず条件次第では「賛成」という世の中にするにはどうすればいいと思いますか?

簡単です。経営者の給料を上げ、従業員の雇用の流動化をはかることです。上場会社の取締役は最低でも1億円の報酬をもらう。そして労働者は転職しやすい環境にする(クビを切ることも可能にする)。そうすれば日本で敵対的TOBが成功しやすくなります。

いいですか。日本で敵対的TOBを成功しやすくしたいのであれば、株主が自分たちの利益だけを主張していてはダメなんですよ。いざというときに儲けたいのであれば、普段から経営者や従業員の処遇もよくしないとダメですよ。経営者の報酬も安く、従業員も転職しにくく、かつ給料が低いといった世の中だと、どうしても敵対的TOBには反対します。なぜなら「クビを切られたら生活できない」からです。日本の世の中全般を変えずに、経営者や従業員だけが悪いと言っていたら日本はよくなりませんよ。変えたいんだったら株主自身も変わることです。

まずは買収防衛策と呼ばれてしまっている事前警告型ルールの導入くらい認めてあげるべきでしょ?

 

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まあこの程度ですよねえ。簡単に予想できたことです。ではなぜこの程度の回答しかしてこなかったのでしょうか?それは買収防衛策がないからです。

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