2022年08月31日

No.1378 (無料公開)有事型について聞いてみました

どうしても私は有事型のプレスのタイトルに(買収防衛策)という表記がないことが理解できないので、以下の質問をしてみました。

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*氏名) 鈴木 賢一郎
*職業) 経営者・役員
*会社名) 株式会社IBコンサルティング
*年齢) 40〜49才
*メールアドレス) 
*内容)
平時に導入される事前警告型ルールに関しては、東証の規則によりプレスのタイトルに(買収防衛策)と表記することを求められますが、有事に導入される買収防衛策のタイトルに(買収防衛策)と表記しなくてもよい理由を教えていただけますでしょうか?
また、平時の事前警告型ルール導入・継続に際しては、その公表の約3週間前には東証に事前相談をすることが求められていますが、有事に導入される買収防衛策の事前相談の実務を教えていただけますでしょうか?両者の取扱いに差がある場合はその理由も教えていただけると助かります。
時間と情報の確保を主目的とする平時の事前警告型ルールに対して(買収防衛策)との表記が求められる一方、明らかに買収提案の実現を阻止することが主目的の有事型に(買収防衛策)との表記がなされていないことに違和感を持っております。
お忙しいところ恐縮ですが、ご回答いただけると幸いです。

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この質問をどこの誰にしたのか?

東証さんです。以下のお問い合わせからしておきました。

https://www.jpx.co.jp/contact/index.html

平時型買収防衛策を継続している皆さんが持っていたであろう違和感ではないでしょうか?買収提案の詳細な情報や検討のための時間を確保することが主目的である平時型に対しては(買収防衛策)と表記するよう求められるのに、どうして有事になってから買収提案の実現を阻止することが主目的として導入される有事型はなぜ(買収防衛策)とプレスのタイトルに記載していないのか?誰もが疑問に思うところではないでしょうか?

そして事前相談の実務もです。平時型の場合、導入・継続を公表する約3週間前までには東証の担当官に対して平時型のプレスリリースドラフトをメールします。でもですね。以下のジャフコのケースをご覧ください。

https://ib-consulting.jp/newspaper/4414/

5月頃~    旧村上ファンドがジャフコ株の取得を開始

8月4日(木)  野村絢氏・シティ社代表福島氏と面談

8月5日(金)  村上世彰氏・野村絢氏・福島氏と面談。このとき、15%弱を取得したことが伝えられ、51%を取得する可能性があることを示唆された。そして野村総研株を流動化し、株式時価総額の約3分の1、連結株主資本の40%にも相当する約500億円もの自社株買いを行うべき旨を要請

8月9日(火)  旧村上ファンドが大量保有報告書を提出(議決権割合6.73%)

8月15日(月)  15:15に上記の有事型買収防衛策の導入などを公表

8月15日(月)  16:01に旧村上ファンドが変更報告書を提出(議決権割合12.21%)

おそらくジャフコは8月5日の旧村上ファンドとの面談で今後51%の株式を取得される可能性があることを示唆されたため、有事型買収防衛策の導入を決断したのでしょう。で、8月15日に有事型を公表した、と。その間10日間ですね。まあ、東証に事前相談はしたけど、繁忙期ではないため開示審査に3週間もかからず、はやくに終わったという可能性もあります。東芝機械も時間がない中での導入でしたね。有事型を公表したのは1月17日です。

https://ib-consulting.jp/newspaper/1602/

1月10日  オフィスサポートから書面により東芝機械に対してTOBの実施可能性について通知

1月13日  TOB実施を1月21日に公表し、1月22日から開始する予定である旨連絡

1月16日  TOB実施を1月20日に公表し、1月21日から開始する旨連絡

なぜ冒頭の質問を東証さんにしたかと言うと、純粋に疑問なんですよ。どうしてこうも平時型と有事型の取扱いが違うのか?そしてどうして平時型が買収防衛策ではないのに買収防衛策と呼ばれ続けなくてはならないのか?

平時型と有事型の目的を考えたら、どうしてもプレスのタイトルに( )の表記を入れたいのであれば、平時型は(事前警告型ルール)、有事型は(買収防衛策)とすべきではないでしょうか?そして有事型の導入に関する事前相談の手続きも明確化・明文化すべきではないでしょうか?

なお当方からの質問に対して東証さんが回答をしてくれるかどうかはわかりません。「お寄せいただいた内容によっては、こちらからご返答できない場合がございますので、予めご了承ください。」とありましたので。ただ、この質問は平時型を導入している会社やこれから有事になって有事型を導入するかもしれない会社にとっては重要な内容です。もし確固たる方針が確立していないのであれば、これを機に買収防衛策と呼ばれ続けてしまっている平時型と買収防衛策である有事型に対するスタンスを明確化するきっかけにしていただきたいと思っております。

何卒よろしくお願い申し上げます。

 

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