2022年09月21日

No.1394 セントラル硝子は戦う覚悟を持てなかった会社

時価総額1,400億円しかないセントラル硝子が500億円の自社株買いをするそうです。もう笑うしかないですね・・・。以下、セントラル硝子の公表資料です。

https://ssl4.eir-parts.net/doc/4044/tdnet/2182975/00.pdf

セントラル硝子はかつて買収防衛策を導入していましたが、旧村上ファンドが大量保有報告書を提出し、おそらく「継続したいが否決される可能性がある」と判断し、自ら廃止しました。そういう意味では、セントラル硝子は買収リスクを考えていたわけですし、企業防衛意識もあった会社なのです。でも、大変失礼な言い方ですが、旧村上ファンドにビビって買収防衛策を廃止してしまいました。

そして今年、セントラル硝子は以下のとおり自社株買いを公表しました。

https://ib-consulting.jp/column/4256/

でも公表後、旧村上ファンドはおそらくその規模に納得せず、シルチェスターから相対でセントラル硝子株を買い取り、保有割合を上昇させ、直近の変更報告書では保有割合が27.44%(議決権割合29.22%)になりました。上記のプレスによると、直近では12,053,400株(議決権割合30.20%)を所有しているそうです。なお、自己株TOBを実施する理由は以下のとおりです。

このように、2022 年8月上旬には、本中期経営計画の着実な遂行によって中長期的な企業価値の向上を目指す当社と、同業他社との経営統合や当社普通株式の非公開化を求めるシティインデックスイレブンスないし村上氏らとの間で、経営戦略の方向性に関する見解の相違が顕著となりました。そのため、 2022年8月上旬、当社は、本中期経営計画の下、当社が持続的成長の維持と中長期的な企業価値向上に向けた施策を円滑に推進していくためには、シティインデックスイレブンスらがその所有する当社普通株式を売却した上で、当社の経営戦略に基づき機動的かつ安定的な事業運営を行うことが必要であるとの考えに至りました。

うーん、経営戦略の方向性が違うから、買い取るってこと?そんな理由でええの?株主と方向性が違うことなんてザラにあるでしょ?そのたびに買い取るの?まあ、現時点では私もざっとしか目を通せていないので、何とも言えないところはありますが・・・。

今回の自己株TOBの諸条件は上記プレスをご確認いただきたいのですが、ざっくり言うと以下のとおりです。

https://ib-consulting.jp/newspaper/4468/

買付価格:3,500円 9月20日終値3,430円 1か月終値平均3,425円 3か月3,273円 6か月2,899円

買付株数:14,285,700株(発行済株式総数(自己株除く)39,909,266株に対して約35.8%

買付資金:約500億円

TOB期間:9月21日~10月20日

TOB代理人:みずほ証券

なんか最近、当たり前のようにこういうケースではプレミアム価格で自己株TOBをやってますけど、本当にいいの?自己株TOBって本来、時価マイナスでやるもんでは?また、自社株買いって市場株価でしょ?高く買っていいの?そうするための理屈は分かった上で言ってます。

なんで時価総額1,400億円の会社が500億円も自社株買いやるんですか?ホントにいいの?セントラル硝子は一時的に500億円もの自社株買いをやって、中長期的な研究開発力や競争力を失うことにならないの?簡単に言えば「この自己株TOB、会社のためになるの?」ということです。

なんでこんなことになっちゃったんでしょうね・・・。少なくともかつてのセントラル硝子は「買収防衛策は必要」と考えていたのです。でも2019年3月に廃止を公表しました。

https://ib-consulting.jp/newspaper/727/

どうして旧村上ファンドが登場した状況で廃止するかね?逆やろ?どうして廃止してから3年もあったのに効果的な対策を打てなかったんだろうか・・・。たぶんこの会社は「旧村上ファンドが買ってきたけど、いずれ出て行くんだろ?」「そんなに買わないだろ」と高をくくっていたのでしょうねえ・・・途中までは。それがドンドン買い増してきて、「しょうがない!100億円の自社株買いを公表しろ!これ以上はやらんぞ。村上もこれで売るだろ?」と考えて今年の5月に自社株買いを公表した、と。でもそれでも買い増しは止まらず、シルチェスターから相対で取得され、さらに市場で買い増され、30%握られてしまった。お・し・ま・い、です。セントラル硝子さん、あまりにも旧村上ファンド対策がおそまつでしたね。私「三信電気と同じ運命やな」と予言していましたから。有料記事なので一部だけ。

まあ、セントラル硝子は5月に公表した自社株買いを中止して、今回の自己株TOBに一本化したので正確にはちょっと違いますが。

https://ib-consulting.jp/column/4313/

もう売却候補がいないから、現状はセントラル硝子に自社株買いをさせることを主目的にしている可能性がありますね。セントラル硝子が三信電気のようにならないことを祈ります。

セントラル硝子に限りませんけどね。大規模自己株TOBをやった会社はたくさんあります。

どうしてこんなことになってしまうかと言えば、旧村上ファンドのことを適正に評価していないからですよ。「村上なんて株価が上がれが出て行くんだろ?」とか「しょせん金儲けが目的なんだろ」とか、過小評価しているんです。「いつか出て行く」と。そりゃ彼らは投資家ですから、いつかは出て行きますよ。でもね、タダで出て行くわけじゃありませんよ。莫大なお金を払わないと出て行ってくれません。セントラル硝子は500億円払いましたよ。

余談ですが、そう考えると、ジャフコは大したもんです。勝つか負けるかはわかりませんが、敵前逃亡せずに戦うことを選んだ経営陣は素晴らしいと思いますよ。

なお、最後にもう一度申し上げたいのですが、本当にセントラル硝子は500億円もの自社株買いをやらなくてはならない会社なのでしょうか?500億円の自社株買いはこの会社の規模に見合ったものなのでしょうか?私はいくら何でも「やりすぎだ」と思うのです。

かつての村上ファンドにはストッパーがいたと記憶しています。いくらなんでもそれはやりすぎ、と村上さんを止める人がいたと記憶しています。そういう人から見て、今の村上さんはやりすぎには見えないのでしょうか?このような過度な要求から「会社」を守るアドバイザーは寄生虫ではないと思います。

みなさん、平時の企業防衛投資は必要ですよ。今回の件で、セントラル硝子には企業防衛に関する知見はいっさい貯まりません。コストとして出て行くだけです。そしてセントラル硝子はおそらく「500億円使ってしまった。また貯めないと」と考えるでしょう。10年後、セントラル硝子にはまたアクティビストが登場しますよ。歴史は繰り返すのです。次はお嬢さん主導でやってくるんじゃないかな?村上さんって繰り返し狙いますからね。

セントラル硝子さん、大変な目に遭いましたね。でも、ひと段落したらちゃんと平時型買収防衛策を再導入しないとダメですよ。必ずまた来ますから。企業価値向上、株主価値向上も当然やらなくてはなりませんが、企業防衛投資も必要なのです。

日本の上場会社はかつて株主利益を軽視してきました。軽視してきたというより、考えなかったのです。なぜなら考える必要がないと思っていたからです。諸悪の根源は証券会社にあると思いますよ。かつて証券会社は公募増資を提案する際、上場会社に「これは返さなくてよいお金ですよ」と言ってきました。返さなくてよい金だと説明されたら、配当なんて考えないでしょ?今、上場会社は変わりつつあります。株主利益を考え、株価のことも考えています。それはアクティビストが与えた影響も大きいと思いますよ。私はアクティビストのことを全否定はしません(もしかしたらHPでは全否定しているかもしれませんが、本音ではしていません)。ただ、あまりにも過大な要求をするアクティビストに対しては否定的です。

今回のセントラル硝子への要求、アクティビストの皆さんはどうお考えになりますか?「当然だ」と考えるのなら、日本の上場会社は皆さんを受け入れないでしょう。そういうアクティビストばかりなら、私は上場会社にガッチガチの防衛策を提案します(笑)

なんかまとまりのないコラムでスミマセン。セントラル硝子の件はまたまとめます。

 

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